2011/11/12

2011年 11月 04日
CSISのトモダチ作戦報告書のサマリーを読む。



 「衣の下に鎧が見える」という評価がまさにふさわしい。美辞麗句に彩られているが、このCSIS・経団連の調査報告は「ショックドクトリン」そのもの。震災復興と日米同盟強化をリンクさせる狙いがある。日米同盟屋が経済分野に進出してきた。。

  CSISの報告書を見ていると、震災後の山口組の活動を連想させる。一方で、災害救援・炊き出しをやりつつ、別の部隊がしっかりと現地調査をやってビジネ ス提携、食い込みを行う。米軍も山口組も暴力組織であるから、本質は同じなのだろう。戦後の日本は米国が山口組を利用して支配したこともある。

  CSIS報告では「日本の将来は日本が選ぶべき」としているが、そもそもこの報告書は経団連との共同作業。経団連はアメリカの方しか見ていない特殊な経済 団体。小沢一郎が「第二経団連」をつくろうした理由もそこにある。CSIS報告書の議長は、現役のボーイングのCEOのマクナニー。
調査団の米国側議長は現ボーイングCEOのジム・マクナニー、他にロッキードのクバシクCOOも参加。他に英国軍需産業Qinteq北米支社のクラウチ、米日ビジネス評議会のファザリー、アフラックのチャールズ・レイクなど米国の東北進出狙う企業の面々。

  アーミテージ本人とその部下のサコダ、ボーイングの国際政府担当の副社長ロスも参加、普天間問題で沖縄の味方のふりだけをした、CFRのシーラ・スミスも 恥じらいもなく参加している。オブザーバーにはカート・キャンベルとブレジンスキー。そして、米国のAPEC担当のカート・トン。調査団の狙いはTPP推 進にある。CSIS報告書のワーキンググループには、GEの関係者が3人も。米商工会議所も3人。他に医薬品会社のメルク、保険会社のアフラック、ビル& メリンダ・ゲイツ財団など。震災復興需要にありつきましょうというタスクフォースであることが明確である。

 要旨では4つの基本認 識。(1)世界は国際システムにインパクトを与える力強い日本を待望する(2)日本人が自らの手で復興への道を選び取り、復興への指導力は日本国内からも たらされる(※わざわざ?)(3)トモダチ作戦は日米の財・軍・NGOの絆を再確認した。そのような路線を深化する必要があるとしている。(4)復興の営 みは、今後の日本経済の発展と活性化、それから日本の国際社会における役割とは切り離して考えられない。自然災害で打ちひしがれている政治指導者が、以前 への復旧だけではなく、新しい試みに乗り出すことは難しいことは理解するが、競争力と経済成長が必要であると。

以下各論。

  <災害対応力と復興>の項では、米国のカトリーナの例を出してその経験を生かせると指摘。提案は復興庁の本部を東北に置くことなど。災害復興のノウハウを 蓄積するべきだという指摘。米国財界の関心は(2)<経済復興>の項目から先にある。カトリーナのあとは、行き過ぎた民営化が横行したなどの問題点が指摘 されており、これが米国のリベラル派のジャーナリストのナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』に結実している。そのような災害便乗型の資本主義の匂 いがこの報告書からもしてくる。

 さて、その(2)<経済復興>。日本の東北地方における技術・経済活力、とりわけ強力な科学的研究機 構・基盤が、復旧後の持続的経済成長を促すとし、長期戦略には以下を列挙⇒安定エネ供給、税制改革(法人税)、規制緩和、貿易自由化。特に経済特区 (SEZ)の重要性を指摘。TPP思惑が各論で展開されている。

 ここまでのまとめとして、私の分析は震災によって生じた復興需要を米国 財界としては経団連と提携して(他の国々よりも)先に取り込んでゆきたいということである。研究基盤を活用し、日米企業研究により、R&Dのコス トをダウンという狙いがあるようだ。その先にあるは中国に対する産業基盤を日本でアメリカ企業が築くことによる中国に対するけん制の意味がある。

  (3)<エネルギー戦略>の項目では、原発の安全確保と再稼働の問題に触れると共に、エネルギーミックスの問題として、LNGの調達の必要性を論じてい る。日米二国で原子力安全の協議会を設立するという提案がある。サマリーだけでは詳しくはわからない。詳細を読む必要あり。

 (4)<健 康と復興>では、医療記録の電子化などを提案。また低放射線の健康被害に関する日米の独立調査パネルを設立する。穿った見方をすれば、福島での健康調査の 結果の重要な部分を先に米だけで囲い込むという風にも見えなくもない。医学的知見の利用に関して日本が不利にならないようにすることが必要だろう。後述す るようにここが今回の報告書のキモとなっているようだ。

 (5)<日米同盟への教訓>平時における震災復興という共同作戦での教訓を、よ り複雑化した日本や日本周辺での安全保障活動での共同作戦に活かすべきである、としている。いつの間にか集団的自衛権が前提になってしまっているのが気に かかる。(6)<市民社会>では、草の根のNGO協力関係を作ることが必要だとして締めくくっている。

 その他に各論。イントロダクショ ンではわざわざ「外圧がこの日本の重要な岐路の選択のさいに加わることはない」として「日本は自らの手で未来を選択する」と書いてある。外圧にならないよ うにジャパン・ハンドラーズのカウンターパートを使ってやらせる。実質的にはコントロールや様々な圧力が働いているという話だろう。ちなみにこの報告書に は「China」という言葉は二箇所にしか出てこない。きわめてアンバランスな報告書である。

 さらに、第4部のヘルスケアの部分。まるでこりゃGE横河メディカルの営業活動のような提言書である。前半は福島原発の放射能の健康影響の共同研究。これも「先取特権」狙いだろう。
第 2部の経済編の「通商政策」もTPP関連で重要か。「日本市場がアジア太平洋諸国とは不連続になっていると考える日本と欧米企業が増えている。だが、円高 は単一で決定的な要因ではない。日本に拠点を置き、輸出をすることの魅力は、日本がTPP交渉や他の通商交渉(日本の参加する二国間貿易協定)に参加する ことで増大される。」としている。日本国内でTPPに関する議論が進んでいることは歓迎すべきであるとはっきりと書かれている。

 経済復 興に関する要旨。マクロ経済に関する項目。「民間主導の復興」。まあこれは良い。が、次に来るのが「法人税を減税し、財政圧力を軽減するために消費税率を 段階的調整(増税)。その政策ができていく中で、個人所得税と住民税の率の低減も考慮されるべし」とあるわけだ。財界の提言書だけにまずは法人税減税と消 費増税、そして余力があれば所得税・住民税も検討すればいいという含みを持つスタンスである。まずは法人税の議論と消費税の増税議論をすることを優先すべ きだというスタンスである。これがそのまま採用されてはかなわない。

 第2部と第4部に書かれているように、やはりCSISタスクフォー スでは米国の主要輸出産品である医療機器のシェア(日米合弁)を拡大する狙いのよう。東北経済特区に関する提言。あとは雇用法制の緩和を低減。他にPPP 推進など。やはり細かく復興公共事業への参加を狙っているようですね。CSISは日本の日本医療政策機構(HGPI)と提携して医療関係の低減も行なって いる。米国財界にとって、日本のヘルスケア産業と軍需産業(ともにGEが関わっている)は重要な未開拓市場であるということだろう。「東北地方では30 パーセントの病院インフラが破壊された」という一節があるが、要するに、IT化されたヘルスケア機器をアメリカとしては売り込みたいです、という話だ。お そらく神戸の医療特区のイメージで東北への医療投資を行うと見られる。

 また、第3部のエネルギー戦略。「日本は世界の原子力開発でアク ティブに活動し続けることで、日本は核にかんする高度の安全性、透明性、不拡散経の協力も可能になる」と。原発をアメリカは日本にやめさせるわけがないと いうこと。日米合弁企業だと海外の株主や経営者の意向に左右される。日本の原子力産業は米国の下請けにすぎない。

 また、東北地方を再生 エネルギーのデモンストレーションの場にするべしというスマートコミュニティ、スマートグリッドの提言がある。これは沖縄・ハワイで展開中の「グリーン同 盟」(2010年から)の流れにある。日米同盟の軍事技術的な側面と環境エネルギーの共同開発をリンクさせて沖縄振興策のアメにするのが「グリーン同盟」 であり、ムチである辺野古への普天間基地移設問題とも絡んでくる。トモダチ作戦で東北に米軍が一時進出したことで、「グリーン同盟」は東北に舞台を移 す。(その提言をしていた海兵隊上がりのグレッグソン前国防次官補代理がタスクフォースに参加している)
以上。

CSIS報告書:http://csis.org/program/partnership-recovery-and-stronger-future-task-force-us-japan-cooperation-after-311


ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く

ナオミ・クライン / 岩波書店






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